映像で言えば4Kのようなきわめて高精細で分解能の高い音

ローヤル産業はドライバーユニットのOEM供給メーカーとして知る人ぞ知る存在である。
DEERブランドとしてはホームオーディオ用に励磁型のユニットを使ったスピーカーシステムで存在感を示していて、そのフラッグシップ、3ウェイのRSS-3000をご存じの方も多いだろう。
カーオーディオ用のドライバーユニットも同じくDEERブランドで展開しているが、こんど登場したのが”予算を度外視し、販売目的を考慮しない”というRCXシリーズ。
3ウェイ(開発用のパッシブネットワーク仕様)で聴いたが一般的なスピーカーを乗り心地のいいセダンにたとえれば、RCXシリーズの聴かせる音は実に俊敏でクリティカル。
概要を短くまとめてみよう。ツイーターRCX050はカーボン振動板の25mm径。フランジは無垢の真鍮から削り出し、 ニッケルクロム仕上げに。エッジも特に軽量なポリエステルだ。
ミッドRCX080はパルプ系に特殊処理剤を含浸させた振動板の80mm径。
センターのダストキャップはカーボン。ダンパーにはアラミド繊維を採用している。
ウーファーRCX170の振動板はミッドと同じ素材。
エッジにはプチルゴムを採用し、フェーズプラグは真鍮の削り出しにニッケルクロムメッキ処理。
磁気回路のカバーはアルミの削り出しで振動コントロールを行なっている。
いずれのユニットもボイスコイルの線材の断面は丸形ではない仕様で、隙間のないようにみっちりと巻き上げ、 磁石にはネオジウムを投入。相当に高い磁束に設計している。
さてその音だ。
映像で言えば4Kのようなきわめて高精細で分解能の高い音で、
たとえば竹内マリヤの声に感じる微妙な凹凸の感じも聴かせてくる。
表現の方向性として精緻なだけでなくリアルで勢いがある。
ただし、中高域に品のいい音色感があって、これがトーン的には特徴になっている。
全域に渡っての音の立ち上がりとしゃがみの速さはなかなか聴いたことがないレベルで、トランジェント性能の高さと言っていいし、音の余韻が残らないタイプという言い方もできる。
これとも関係するが、音像の立体感はかなり良く、音像どうしの間にきちんと空間が出てくる癒着の少なさは大きなストロングポイントに感じた。
RCX シリーズは3ウェイの三つの振動板のそれぞれが分割振動なく、きわめて高い精度で作動するし、なおかつそれを強力な磁気回路で動かしている。
そんな印象のドライバーユニットだ。持てる技術力を制限なく、全部ぶちこんでしまった3ウェイ。
なにしろ予算度外視だ。
インストーラーが車内でこのポテンシャルをどう使いこなし、 トータルでどんな再生音を聴かせてくれるのか楽しみでならない。

鈴木 裕(すずき・ゆたか)

1960年東京生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。大学のオーケストラ部でヴァイオリン担当。オーディオ評論家、ライター、ラジオディレクター。ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディングディレクターの経験も持つ。 『オートサウンドウェブ』グランプリ選考委員。音元出版銘機賞選考委員、 音楽之友社『ステレオ』ベストバイコンポ選考委員、ヨーロピアンサウンド・カーオーディオコンテスト審査員。ハイエンド・カーオーディオ・コンテスト審査員。

RCX-170

強力なダンピングファクターを得るため磁束密度は従来からの25%UPとし、 磁気回路の振動を抑え,歪み音を無くすためにアルミ無垢材から削り出した。
フェーズプラグは真鍮削り出し、更にニッケルクロムメッキを施し 磁気回路内部からの空気流動をスムーズにした。
従来品と比較して低域の伸びを改善するために、ブチルサウンドへ 変更することで豊かな低温再生の実現。

RCX-080

現行から更なる「品のある中高域」を求め音速、 追従性が優れるカーボンダストキャップを採用しクリアーな再生に貢献。
振動板の微調整を再度行い質の向上を実現。

RCX-050

音速は従来品と比較して2倍の速度があるカーボンダイヤフラムを採用し 音離れとクリーンな高域を実現。
フランジリングでは材質の厳選及び形状での変化をカット&トライで辿り着いたのが、 真鍮無垢材からの削り出し、更に放射特性を考慮しテーパーカット後 表面仕上げにニッケルメッキを施し滑らかな音とした。
カーボンフラムの特性を生かすため、 応答性、追従性を考慮しサラウンドは軽量素材を厳選。

Price

RCX-170 & RCX-050(パッシブレス)
希望小売価格 ¥980,000-(税別)
RCX-080
希望小売価格 ¥250,000-(税別)
単品価格
単品価格 RCX170ペア ¥650,000-(税別)
単品価格 RCX050ペア ¥365,000-(税別)